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2009年7月13日 (月)

■田辺 功の医療よもやま話 「手術できない脳動脈瘤」



■手術できない脳動脈瘤 [09/06/25]

今回は、茨城の60代女性からのご相談です。

相談
 「脳の奥のほうに動脈瘤(どうみゃくりゅう)があり、先生に『手術できない』といわれました」

回答
 脳の動脈瘤は血管の弱い部分が血液の圧力で少しずつふくらんできたものです。「未破裂動脈瘤」は普通、脳ドックでのMR(磁気共鳴)検査で見つかります。動脈瘤は風船のように徐々に大きくなって、壁が耐えられなくなると破れます。破れると、激しい頭痛を伴うくも膜下出血(脳卒中の一種)が起こり、半数近くは死亡します。若い人にも多い恐ろしい脳卒中です。

 大きいほうが破裂する確率は高いのですが、同じ大きさでも破裂するかどうかや、その後の大きくなりかたには個人差があります。従って「未破裂動脈瘤」の危険度を判断するのはとても難しいことです。

 この方の質問では「手術不能かどうか」「手術が必要かどうか」が問題です。医師はよく「手術できません」「いまの医学では治療は無理です」といいますが、ほとんどは「自分の病院では」の意味です。手術の名手や、その病院ではできない新しい方法を使えばできることも多いのです。

 たしかに脳の深い部分の脳外科手術は熟練した名手しかできません。まれには手術不能の可能性があります。しかし、手足から管(カテーテル)を入れ、動脈瘤の内側をコイルで埋める脳血管内治療は原理的にはどの場所でも可能です。

 神経を圧迫したりして痛みや視力低下など症状がある場合を除けば、動脈瘤は破裂しない限り無害です。一方、手術や血管内治療にも失敗の危険がありますので、小さくても取ったほうがいい、とはいえません。日本脳ドック学会は「患者の余命が10年から15年以上あり、大きさ(直径)5~7ミリ以上」「それより小さいが特定の場所や形」を治療対象としています。実際、米国のデータでは7ミリ未満はほとんど破裂せず、7~12ミリは年0.5 ~3%の破裂率です。20年間で10%から60%の確率です。

 日本人は心配性ですから、脳動脈瘤やがんはどんなに小さくても取ってもらってスッキリしようと思いがちです。お医者さんもそれで商売しているようなところもあり、ややオーバー気味にいいます。高血圧などがなければ7ミリまではまず大丈夫でしょう。危険度に見合った適切な対応で、不要な治療を避けることも賢明なことです。

田辺 功(たなべ・いさお) プロフィール

医療ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。1944年生まれ。68年東京大学工学部航空工学科卒業。同年朝日新聞社入社。大阪本社科学部次長、東京本社科学部次長、同部編集委員などを歴任。主な著書に『漢方薬は効くか』『医療の周辺その周辺』『ふしぎの国の医療』『ドキュメント医療危機』など。



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